「プロメア」今石中島コンビの異様な映画....また私は如何にして完成度を諦め燃え上がるようになったのか
今石&中島コンビの初のオリジナル映画
「プロメア」を見てきた
結論から語るのであれば
『ラーメン食べに行ったら、出て来るのに1時間以上かかって、その間食ってる餃子のしゃしゃりもなく水は変な味がする。
やっとラーメン来た!と思って食べたら美味いけど食べなれた味、いやでも確かにうまい』
こんな感じ
まず舞台となる街の景観をこれでもかと見せられるが、とにかくビルのCGが酷い
もちろんビルを作り込め!というわけではなく、この映画は徹頭徹尾 物体のデザインやエフェクトのセンスが酷い
あからさまに予算の問題が浮き彫りになるような光景を長時間見せられてもひたすら不安にさせられ、事が起きた!と思うとあの炎のデザインが安っぽいわ人工物さが前面に出すぎていて違和感が続くし
この話の核となる炎はキャラクターの感情を表したり、後半で明かされる炎の謎などと非常に重要なファクターであるにもかかわらず、まったくそこにはシンクロせず
「CGソフトで作ってます」と無機物感から画面をはじき出される
さらにこれまでは得意だったはずのオフビートなコメディの流れでキャラクターの魅力を見せていく今石監督の過去作と比べると、非常に薄味でとにかくセリフで説明してしまう
例えばセルフパロディ的な主人公ガロ、馬鹿で無鉄砲で熱血漢というのがあまり行動では表されない
パロディ元のカミナであれば足を踏み鳴らしたり、考えるより先に体が動くような魅せ方だからこそ良いが、ガロは粗暴でもなければ声も荒げない
しかしこれは主演で一番声を張って見栄を切らなくてはいけない松山ケンイチの演技プランが間違っているせいも大きい
どこか声が落ち着いていて見栄切りのシーン全てが聞き取りにくい、勢いがでない
なぜコレにリテイクを出さないのか上映中不思議で仕方なかった
打って変わって堺雅人は非常に良かった
元よりキャラクター演技が得意であるにしても、クライマックスでの声の荒げようはしっかりと邪悪さが全面に出ていて落ち着く
そして映画全体の問題として、2幕目に至るまで(具体的に言えばガロが収監されリオがデビルマン化)にガロとリオの対立があまり行われない
「こいつ、気に入らねぇ!」的な後の魂を共鳴させるフリがないせいで、終盤の協力して敵に立ち向かう理由が「共通の敵だから」以外に何も見えてこない
なんというかゲームのチュートリアルでラスボス手前まで来た。という感じ
いい加減辛くなってきて、金返せと思い始めたその時
1時間30分ほど経過し、主人公二人がやっと巨大ロボに乗り込んでから一気にかつての勢いを取り戻していく
あまりにも突然現れ、ロボである必要もないという点を「デウスエクスマキナ」という機体名でギャグにしてしまうのはイイし、意図的かどうかはわからないがHEROマンセルフパロディ?
そこからやっと期待していた「いつもの今石・中島コンビ」を見せてくれる上に
フィル・ロード&クリス・ミラーコンビにも似た笑いも多く、一気にテンポが良くなっていく
ロボや技名が後ろに字幕に出たと思ったら一瞬で消えたり、武器で隠れてたりなど
(シンゴジラのテロップギャグへのオマージュを感じる)
これでなんとか元は取れたし「それを....待っていたぁぁぁぁ!!!」
しかし問題が解決するための「不完全燃焼のプロメア星人をすっきりさせる」
というこの話の問題点がガロにもリオにもかかっていないため、結局物語のテーマにはライドできずやはり映画全体の不出来さが浮き彫りになってしまう
脚本の中島さんは当初「ヒックとドラゴン」的なジュブナイルをやろうとしていたが、今石監督が嫌がったらしく「のっけからアクションシーンが出てくるような映画にしたい」ということで今作の出来になったらしいが
前半ジュブナイル、後半手癖全開という判断にしていれば一般受けも狙えて、やりたいこともできたんじゃないだろうか
実際ヒックとドラゴンはのっけからアクションシーンをやっているし、後半は手に汗握る熱い空中戦を繰り広げているのだから
なんというか今石監督がグレンラガンなど過去作から新しいこと、成長したところからは一切出ずに「いつもの、みんな知ってるオタク映画」で留まっているのが少し残念
次はちゃんとウェルメイドでありながら手癖全開の「大人な映画」を見せて欲しい
ボロクソに言ってるけど、自分の魂の真ん中にはグレンラガンがあるからこそ、さらにこのコンビの燃える作品が見たいという気持ち故です
あとリオくんはめっちゃ可愛い